アウトフロー

 たまには研究のことについて真面目に書こうと思う。
 最近、NSSTCのX線グループの人と共同研究をしている。彼は観測家で新しい観測対象を探すためにアーカイブデータからいろいろ面白い天体現象を探している。
 今、我々が取り組んでいるのはクエーサー活動銀河核(AGN)の一種)からジェットではなく、ウィンドのようなアウトフローが出ている(要は細く絞られていないプラズマ流)ものである。しかもその速度が相対論的な速度(光速の30%程度)まである。今までクエーサーを含むAGNではウィンドのようなアウトフローは幾つか確認されている。しかしそれらは速度が遅い。この速度の遅いアウトフローは活動銀河内で起こっている活発な星形成(スターバースト)に起因する輻射圧によって形成されていると考えられている。しかしこのモデルで説明できるのは速度の遅いアウトフローに関してのみだ。今回のはそれとは異なる方法によって形成されているであろうと我々は考えている。さてその方法なのだが。ある研究グループは降着円盤からブラックホールへのガスの流れである降着流から出る輻射の圧力によって形成できると説明している。しかしそのような状況を達成するにはブラックホールへの質量降着率がエディントン限界を超えている必要がある。そのような状態でそんなに輻射が出るのであろうか?今回見つかっているクエーサーから質量降着率を見積もることが出来ればこのモデルの予想する状態になっているかどうか調べれるであろう。もちろん我々としては今までのに変わる新しいモデルを作ろうと日々考えているわけだが。