訪問

 先週、月曜からBiremann氏の学生のDutan氏がNSSTCに来ている。

 私のコードを使ってジェット関係の研究がしたいと言って、1年半からコードを渡してはあったのだが、彼女自身シミュレーションの経験がなく、ましてや数値流体力学の基礎も知らないのでなかなか思うように研究が進んでいなかった。ということで実際の研究を進めるための議論をしに来ている。

 彼女としては実際の研究を進める議論を重きに置きたい感じだったが、私のコード、少なくとも数値流体力学の基礎なしにはシミュレーションをやっても何をやっているのかまったく分からないと思ったので、まずそこをしっかりと理解してもらおうと私は決めていた。ただ、彼女が数値流体力学についてどれくらいの理解があるのかさっぱり分からなかったのでどの程度まで掘り下げて教えればいいか正直困惑していた。

 考え抜いた末の結論は、まったく知らないと仮定して教えた方が漏れがないだろうということだった。ということで1から基礎を教えるつもりで講義ノートの準備を始めた。けどこれがなかなか骨の折れる作業だった。教えられるより教えることの方がよっぽど大変なんだなといまさらながら理解した。

 彼女の理解度を見ながらの講義だったが、初日に差分法の基礎から流体力学、MHD方程式への拡張、多次元への拡張を教えた。二日目は相対論的MHDへの拡張と高精度スキームの概念と自分のコードで使っているスキームの説明。3日目は私のコードのフローチャートと実際のコードを比べながらどの部分が何をやっているかを説明した。これだけみっちり教えればきっとかなり理解したと思う。ある意味あきれたのだが、私のボスもこの講義に参加していたのだが、彼女よりもボスの方がいろいろ質問してきた。これぐらいのことは理解しているだろうと思っていただけにびっくりした。普通こういうことはボスがするものなのだが、ボス自身が分かっていないのだから仕方がない。それにしてもよくこの程度の知識で論文が書けたなと思う。PICが専門なんで仕方がないのかもしれないが。

 金曜には彼女のやってきた研究を発表してもらい、具体的に何をシミュレーションで研究していくかの議論を始めた。また彼女には幾つか宿題を出した。一つは簡単な流体のコードを自分の手で作ってもらうこと。これができれば、どうすればコンピュータで流体のシミュレーションができるかを理解することができる。もう一つは私のコードを使って衝撃波管のテストをしてもらうということ。これをやれば、ある程度私のコードを理解できるかと思う。

 先週はほどんど彼女のための時間を取られてしまった。自分の研究の方にしわ寄せがきているのがつらい。

 来週からは少しずつ具体的な研究用のシミュレーションを始める予定である。